近隣トラブル
近隣トラブル事情
近隣トラブルとは、騒音、境界などの問題からプライバシーにいたる問題まで、生活を取り巻くあらゆるシーンで発生し、マンション建設問題などは近隣住民を巻き込んだ長期・継続的なテーマでもあります。
全国的な規模での調査は、下記の「公害苦情調査」に見るもので、狭い地域でのトラブル事情については、県単位・市町村単位の記録を参照せざるを得ない状況でしょう。
「公害苦情調査」に見る公害苦情状況
多種多様な近隣トラブルのなかでの、「公害苦情調査」は、公害等調整委員会(総務省)により毎年行なわれています。
平成18年度の全国の公害苦情件数(97,713件)のうち、「大気汚染」「水質汚濁」「土壌汚染」「騒音」「振動」「地盤沈下」及び「悪臭」のいわゆる「典型7公害」の苦情件数は67,415件(公害苦情件数の69.0%)で、前年度に比べ423件(対前年度比+0.6%)増加しています。
また、廃棄物投棄など上記「典型7公害以外」の苦情件数は30,298件(公害苦情件数の31.0%)で、前年度に比べ1,635件(対前年度比+5.7%)増加しました。
「典型7公害」の内訳
平成18年度の全国典型7公害の苦情件数の内訳は、多い順から「大気汚染」:24,825件(典型7公害の苦情件数の36.8%)、「騒音」:16,692件(同24.8%)、「悪臭」:13,697件(同20.3%)、「水質汚濁」:9,825件(同14.6%)、「振動」:2,081件(同3.1%)、「土壌汚染」:271件(同0.4%)、「地盤沈下」:24件(同0.0%)で、典型7公害の苦情件数の約4割は「大気汚染」、「騒音」は7年連続で増加しています。
典型7公害以外の内訳
平成18年度の全国典型7公害以外の苦情件数のうち、「廃棄物投棄」は15,064件(典型7公害以外の苦情件数の49.7%)で、前年度に比べ640件(対前年度比+4.4%)増加しています。
この廃棄物投棄の内訳は、「生活系」投棄が10,951件(廃棄物投棄の72.7%)と最も多く、「建設系」投棄:1,984件(同13.2%)、「産業系」投棄:1,658件(同11.0%)、「農業系」投棄:471件(同3.1%)となっていて、この「生活系」投棄は、平成14年からずっと10,000件を超えています。
※「生活系」とは、主に家庭生活から発生した生ごみ・紙くず・新聞紙等の燃焼物、空き缶・空きびん・乾電池等の燃焼不適物、家具・電気製品・ピアノ等の粗大ごみ等による「一般廃棄物」の投棄です。
公害発生原因別内訳
平成18年度の全国の公害苦情件数(97,713件)の公害発生原因別内訳順は、「焼却(野焼き)」:20,525件(全体の21.0%)、「廃棄物投棄」:13,310件(同13.6%)、「工事・建設作業」:10,233件(同10.5%)、「自然系」:7,042件(同7.2%)、「産業用機械作動」:6,652件(同6.8%)となっています。
このように、全国レベルで見れば、発生原因の中で最も多いのは「焼却(野焼き)」で、全体の約2割も占めているのです。
被害の発生地域別内訳
平成18年度の全国公害苦情件数の発生地域別内訳は、都市計画法による「都市計画区域」が86,651件(全体の88.7%)、「都市計画区域以外の地域」が11,062件(同11.3%)となっています。
さらに、「都市計画区域」の用途地域別内訳は、「住居地域」:39,273件(同40.2%)、「市街化調整区域」:18,120件(同18.5%)、「その他の地域」:9,825件(同10.1%)、「準工業地域」:7,275件(同7.4%)、「商業地域」:5,131件(同5.3%)、「近隣商業地域」:3,137件(同3.2%)、「工業地域」:2,903件(同3.0%)、「工業専用地域」:987件(同1.0%)となっています。
このように、被害の約4割は「住居地域」で発生しています。
被害の種類別内訳
平成18年度の全国公害苦情件数の被害の種類別内訳は、「感覚的・心理的」被害:69,429件(全体の71.1%)、「健康」被害:6,530件(同6.7%)、「動植物」被害:2,731件(同2.8%)、「財産」被害:2,624件(同2.7%)となっています。
このように、被害の約7割は「感覚的・心理的」被害なのです。
平成18 年度、その他の調査結果
- 全国、全体の公害苦情件数が最も多いのは東京都(8,554件)、次いで、埼玉県:8,478件、愛知県:7,115件、千葉県:5,291件、大阪府:5,010件の順です。
- 典型7公害の苦情件数が最も多いのも東京都(7,308件)、次いで、愛知県:5,720件、埼玉県:4,808件、大阪府:4,559件、神奈川県:3,649件の順です。
- 典型7公害以外の苦情件数が最も多いのは埼玉県(3,670件)、次いで、茨城県:2,131件、千葉県:2,001件、福岡県:1,631件、群馬県:1,451件の順で、一方、最も少ないのは神奈川県(65件)となっていて、上記2)とは様相が異なります。
- 全国の公害苦情取扱件数は103,830件、うち地方公共団体が直接処理した公害苦情件数は89,130件(取扱件数の85.8%)。
- 行政措置の約7割は「発生源側に対する行政指導」が中心。次いで、「原因の調査が中心」が19.2%、「申立人に対する説得が中心」3.6%、「当事者間の話合いが中心」が2.3%
- 直接処理の約6割は「防止対策」を実施。そのうち最も多い防止対策は「作業方法、使用方法の改善」、次いで「営業・操業停止、行為の中止」が9,015件(同24.0%)、「原因物質の撤去、回収、除去」:12.5%、「機械、施設の改善」:8.1%、「故障の修理、復旧」:3.2%の順。
近隣トラブルの要素
上記は、国の「公害苦情調査」にみるデータ上の公害を、近隣レベルで見ようとしたものですが、一般的な近隣トラブルはさまざまな方面で発生しますので、それらの項目を「近隣トラブルの要素」として整理しておきます。
1.建築基準法上のトラブル
建築基準法は主に建物の構造的安全、火災予防、環境衛生についての最低基準について定めたものに過ぎません。このことは、最近マンションや高層ビルが、建築基準法に則って設計・建設されているにも関わらず、多くの近隣トラブルを引き起こしていることからも、建築基準法上の問題がトラブルの基本にもなっています。
2.都市計画や建築協定上のトラブル
よりよい住環境とするために、地区計画や建築協定などで敷地面積の最低限度や建物外壁線の後退距離を定めること等があり、最低守るべき法的ルールとなっています。法的拘束力を持たない場合においてはなおさらトラブルが発生しやすいといえます。
3.住まいとその環境上のトラブル
日常生活のさまざまなシーンで、近隣トラブルが発生します。
基本的には、個人間の努力によって、解決できるはずの問題ですが、なかにマンション建設問題等個人間から地域ぐるみで取り組まなければならない問題に発展することがあったり、昨今話題の“騒音おばさん”のような例もあって、多様化している傾向があります。(順不同)
- 騒音(建築、工事、カラオケ、車、ペット、楽器等)
- 隣地境界
- 建物外壁の位置
- 宅地の盛土や改変
- 敷地内の雨水排水
- 土地の分割
- 日影・日照問題
- 風通し、通気・換気、匂い
- プライバシー侵害
- ごみ置き場
- 粗大ごみ投棄
- 街の景観や眺め
- 電波障害
- 風害
- 光害
- ペットのマナー
- ブロック塀、フェンス
- 庭木、街路に出た植木