近隣トラブル

境界トラブル予防

紛争が起こる原因

境界には、地番と地番との境目を決めている当事者の話合いで決めることのできない「公法上の境界」と、所有権の範囲の境目を決めている「私法上の境界」があり、このどちらの境界であっても、非常にもめやすく隣地トラブルの種であることは周知のとおりです。

このように境界がもめやすくなる原因として、

1)肝心な公図自体が不正確な場合

課税のために作成されてきた公図の歴史から、当時の測量技術が乏しい時代に作成された公図が現在の法務局にある公図へ引き継がれ、このことで公図と実際の土地が一致していないことが全国あちこちで発生しています。

2)境界の確定が認識されていないこと

境界が直接には目に見えない状態であったり、もし境界石らしきものがあればこれを絶対視しがちです。境界が見えない状態にあればお互いが勝手なことを主張しあう原因になったりするでしょうし、また境界石らしきものがあっても、それが動いていたとしても気づかずそれを信用、主張します。ですから自分の主張の誤りに気づくことなく、自分は正当であると考えたりすることもトラブルの原因のひとつです。

3)土地神話

とくに都市部において土地が高騰し、大きな資産価値をもたらしていることがトラブルの現実的な大きな原因です。少しでも自分の土地を広く主張したいという人の欲求による分かりやすいトラブルなのでしょう。

境界紛争の実態

境界に関する争いの内容は、いろいろな事情や原因でさまざまですが、要は“境界はどこか”という問題に落ち着き、根本的にはシンプルな問題なのです。
しかしこのシンプルなはずのこの“境界はどこか”が、実際には簡単に分からないためによくトラブルになっているのが現実です。

トラブルの内容として

  1. 自分の土地へ隣家が侵害(塀や建物の軒、物置など)していて、境界侵害だ。
  2. 境界が以前より変わっていて、土地が狭くなっている。
  3. 自分の土地の面積が以前に比べ足りない。

といった、結局は所有権の範囲、すなわち「私法上の境界」が確定されていないと思われる主張にかかわっています。

たとえ「公法上の境界」が決まっていたとしても、この地番の境という公法上の境界は、当事者の話合いで位置を変えたりずらすことはできないことと、「公法上の境界」の決定が必ずしも互いの土地の支配範囲「私法上の境界」を自動的に定めるものでもありません。
したがって、紛争処理としては“境界を確定する”よりは、“土地所有権の範囲を確定する”ほうが、より直接的で効果的なことも理解しておく必要があります。

しかしこれでは問題が解決しないような場合、境界を確定するのは、「境界確定訴訟」の裁判しかありませんでしたが、あらたに裁判外の「筆界特定制度」が創設されています。

「公法上の境界」の確定、「筆界特定制度」とは

この制度は、境界トラブルの早期解決に創設されたもので、平成18年1月20日から施行されています。

「不動産登記法」の改正により、新たに創設された『筆界(ひっかい)特定制度』は、法務局に申請すると、登記されたときに決めた筆界(境界線)が、現地でどの位置になるかを特定してくれます。
これまで境界確定のトラブルには裁判で決着をつけるほかなく、平均約2年くらいの時間がかかるほか、証拠資料などすべて双方の当事者が用意して主張しなければならず、大変な労力を要する難しい手続きでした。こうした手続きにかかる期間を筆界特定制度を導入して、約6ヶ月〜1年をめどに大幅に短縮しようとするもので、費用は申請人の負担として、申請の際の手数料(筆界をはさむ土地の価格から算出され、たとえば合計4,000万円なら8,000円)のほか、測量の費用などがかかります。
もし、筆界特定の結果に不満があるときや、所有権を争うようなときには、やはり裁判所で訴訟をする必要があります。ただ、裁判の中でも筆界特定の際の資料が取り寄せられて、専門家の意見として尊重されることとなります。もちろん、筆界特定制度を利用せずに、最初から裁判で争うことも可能で、異なる結論が出た場合には、判決が優先されます。
一度判決が出た境界については、筆界特定制度を利用することはできません。

<制度利用の条件や順序>
  1. 申請できるのは登記簿上の所有者かその相続人等。
    隣地所有者との共同申請も、一方の土地所有者だけの単独申請も行えます。共同所有の土地で、そのうち一人の所有者だけが申請することも可能です。申請先は、この土地を管轄する法務局・地方法務局となります。
  2. 筆界調査委員が調査し、関係者は資料や意見書の提出可。
    筆界調査委員とは、弁護士や土地家屋調査士・司法書士などの中から事件ごとに選ばれた者。資料調べ、申請人や関係者から事実の聴取、実地調査や必要に応じて測量や鑑定を行います。提出された資料や作成された調書等を、関係者は調査の途中で閲覧することができます。
  3. 最終的に「筆界特定書」が作成され、登記所で公開、永久保存。
    筆界特定書は、筆界特定の結論と理由の要旨を記載したもので、登記簿には、筆界特定がなされた旨が記載されます。登記簿と同じく広く公開され、誰でも写しの交付を受けることができます。

「私法上の境界」確定とトラブル予防

「私法上の境界」は、私的自治の原則に基づき、当事者が自由に決定し、処分できるものであり、隣接する土地所有者同士が話合いによって私法上の境界を変更することができます。
紛争の解決は、個人の権利義務の争いですから裁判所による「所有権確認訴訟」によって解決されるべきものですが、和解により解決することもできます。

基本的に「私法上の境界」を確定させるためには、話し合いにより、当事者の合意ができて、いちおう境界と定めるところが定まればトラブルの事態はおさまります。当事者の合意ができれば、双方がこれを真の境界と考えて物事が運ばれていきますから、事実上は「公法上の境界」が確定できたのと同じ状況になり得るのです。

トラブル予防の意味で、もしも相手方に明確に意思表示をしたい場合や、証拠として話合いの内容を残しておきたい場合などに、「内容証明郵便」を使うという方法もありますが、使い方によっては相手との関係を悪くすることもありますので、慎重に対処することが必要なのです。

書式及び参考資料

注意事項

利用者の皆様に提供する回答は、弁護士の法的助言にかえることはできません。あくまで、ご自身の判断の一助にしてください。