セクハラ

この分野の特徴

厳しさを増すセクハラ問題

近年、セクハラ(セクシャルハラスメント)問題を巡る環境が厳しさを増しています。

2007年4月1日に施行された改正男女雇用機会均等法では、事業主による雇用管理義務が配慮義務から措置義務へと格上げされ、各企業に厳しいセクハラ対策が求められるようになりました。

また、近年セクハラが社会問題化し、社会的に認知されるにともない、女性の被害者意識が高まり、セクハラ訴訟の件数が増加の一途にあります。くわえて、弁護士やボランティアグループなどによる被害者女性に対する支援体制の確立。被害者勝訴判決の増加なども、訴訟件数の増加を後押ししています。

セクハラに対する裁判所の認識も、近年大きな変化を見せています。かつてアメリカでのセクハラ訴訟の頻発をきっかけに、わが国でもセクハラが問題となり始めた当初は、裁判所にはわが国でもセクハラをアメリカ同様違法性のあるものとすべきかどうかについてのとまどいが存在していました。そのため、裁判所はセクハラの違法性の認定に非常に慎重で、仮に違法性を認めても、損害賠償額はきわめて少額に抑えられていました。

しかし、当時訴訟にまでもつれ込んだセクハラ事件は、役員などが無理やり女性社員の体を触ったり、抱きついたり、強引に性的関係を迫るなどの悪質なものが多く、原告女性に被害があることは明白でした。このため裁判所は、セクハラ行為の違法性に慎重であったにもかかわらず、被害者女性勝訴の判決を多く下す結果になりました。

こうした一連の原告勝訴の判決は、司法のセクハラの違法性に対する認識を高め、裁判所により積極的な被害認定をためらわせないきっかけとなりました。最近では、わずかに性的な内容を含むEメイルを女性に送っただけでもセクハラと認定されるなど、厳しい判決も出始めており、損害賠償金に関しても賠償額が高騰。1,000万円近い判決も下されています。

さらに、これらの一連の判決により、社会においてもセクハラの違法性に対する認識が高まり、これまで泣き寝入りしていた被害者女性が訴訟に訴えるようになったことによる訴訟件数の増加も近年のセクハラ問題の変化のひとつです。とくに、これまで一般的だったセクハラ被害者女性が退職後に訴訟に打って出るというパターンに変わって、近年では支援グループの援助を得た被害者女性が、在職したまま訴訟に訴えるというケースが目立っています。

女性への偏見がセクハラ問題の主役に

セクハラに対する概念も大きな変化を見せています。

男女雇用機会均等法21条は、セクハラを「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受けること」(対価型セクハラ)と「職場において行われる性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されること」(環境型セクハラ)の2種類に分類していますが、当初こうしたセクハラの概念は、上司が職務上の優位な立場を利用して、女性社員の体を触ったり、抱きついたり、性的関係を迫ったり、ヌードポスターを机に置いたり、いやらしい冗談を女性に投げかけるなどの行為が中心でした。しかし、1999年に男女雇用機会均等法による企業の配慮義務が課せられたことで、各企業が積極的にセクハラ対策に取り組み、経営者や男性社員の意識が向上したおかげで、これまでのようなセクハラ行為は目に見えて減少することとなりました。

こうした中、かつてのセクハラ行為に代わって、近年セクハラ問題の主役として登場してきたのが、上司あるいは男性社員の一方的な女性に対する価値観に基づく女性社員への嫌がらせ的言動です。たとえば、女性は男性を立てるべきだとか、女性社員は若く、美しくあるべきだとか、お茶くみや掃除は女性社員の仕事だとか、女性は結婚したら退職して家事や育児に専念すべきだとかの一方的価値観に基づいた、男性の女性社員に対する不愉快な言動が、近年のセクハラ問題の主役となっているのです。

こうした新しいセクハラ分野が問題化した原因としては、近年の未婚率の上昇による未婚女性社員の増加、企業の派遣社員の活用による女性派遣社員の増加などが考えられ、こうした女性社員に対する不愉快な言動が法的にも問題化しているということができます。また、最近急増した職場のトイレや更衣室におけるのぞきや盗撮をセクハラの一つとみなす例もあり、セクハラの概念はさらなる広がりを見せています。

さらに、セクハラ問題に関する最近の傾向のひとつとして、改正男女雇用機会均等法で事業主の雇用管理義務が配慮義務から措置義務へと格上げされたことともあいまって、企業のセクハラ対策が強化されていることを挙げることができます。ある調査では、大企業の7割以上、中企業の約半数がセクハラ対策を実施していることが明らかになっていますが、かたや従業員数100人以下の小零細企業では、実施率が10%前後と対策の立ち遅れが目立っており、これらの企業の対策が大きな課題となっています。

ちなみに、かつてのセクハラ訴訟はこうした小零細企業の役員によるものがほとんどで、企業内で解決を図ることの多い大企業で訴訟に至るケースは稀でしたが、近年ではこうした大企業に対するセクハラ訴訟も出始めているようです。

また、これまでのセクハラ訴訟では、民法709条に基づく不法行為で加害者本人を訴えるとともに、企業に対しては民法715条に基づく使用者責任で損害賠償を請求するというのが一般的でしたが、近年では民法415条の労働契約に基づく付随義務としての職場環境整備義務責任に違反したとして企業を訴えるケースも出始めています。

このように近年におけるセクハラ問題は、その概念、加害者責任、法的解釈といったすべての面で拡大、厳格化の一途にあるといえ、各企業やその役員、社員は厳しい対策を迫られています。

書式及び参考資料

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