医療

この分野の特徴

2006年において、273の国立病院や大学病院などの医療機関が報告した医療事故は、前年比182件増の1296件。そのうち死亡事故は前年比9件増の152件、後遺症の恐れのある重大事故は42件増の201件となっています(日本医療機能評価機構調べ)。

医療現場では、医師や看護婦などの医療従事者が医療を遂行する過程において、予期せずに患者の心身に損害を与えてしまう人身事故が起きてしまうことがあります。これらの医療事故のうち、医療従事者が守るべき医療的準則に反して、十分な注意を怠ったり、十分な必要措置を行わなかったなどの人的または物的な過失によって、患者に身体的または心的損害を発生させてしまったものを、医療過誤と呼んでいます。

こうした医療過誤の最近の事例としては、健康な患者の細胞をがん患者の細胞と取り違えてがんと診断し,肺の摘出手術をしてしまったケースなどが報告されています。

とくに医療が著しく専門化、細分化し、医療技術も高度化した現代では、一部の医師が最新の医療知識から取り残されてしまっており、誤診や治療の遅れなどの医療過誤の原因となっていると指摘されています。

このような医療過誤は、医師や看護婦などの医療従事者の人為的ミスが原因となっているため、医療側が損害賠償などの責任を負わなければなりませんが、医療側が素直にミスを認ないケースも多く、やむなく被害者が訴訟に訴えるケースも出ています。

医療過誤の被害者が病院や医師の医療ミスを問う民事訴訟は近年増加の傾向にあり、わが国における医療過誤訴訟は1997年の597件から2004年には1110件へと増加。2005、2006年は1000件を下回ったものの、10年前と比べると実に2倍近い増加ぶりを見せています。

さらに、こうした訴訟件数の増加にくわえた、医療過誤訴訟の最近の特徴としては、裁判期間の短縮が挙げられます。医療過誤訴訟は専門的かつ高額の重大裁判としてかっては10年近くかかることも珍しくありませんでした。しかし、近年医療裁判に熟練した裁判官が医療訴訟にあたる医療集中部と呼ばれるシステムが東京などの大都市で導入されたことで、多くの裁判期間が2年以内に短縮化され、全国平均で見ても2005年の地方裁判所の一審の裁判期間は約2年2ヶ月へと短縮されています。

また、これまで医療裁判における医師の役割は、裁判所から選任されて鑑定意見を述べるだけでしたが、近年では裁判の初期段階において事件の争点を明白にするための、医師専門委員という制度が創設され、医師が裁判における専門委員としての役割を果たすようになったことも最近の医療過誤訴訟の特徴のひとつとなっています。

さらに、医療事故の調査を担当する医療事故調査委の新設やすべての医療事故の報告の義務付けが検討されるなど、新たな医療過誤対策も模索されています。

ちなみに、医療過誤は医師や看護婦などの医療従事者が人的または物的な過失によって、患者に身体的または心的損害を発生させてしまったものをいいますが、同じ医療事故でも、原因が不可抗力で発生し、医療従事者の過失や怠慢を原因としないものについては、医療過誤と言うことはできません。また、医療従事者の人的な過失や不注意が原因で発生したものの、さいわい患者に損害は生じなかったというケースも多く、このようなケースは医療事故にはあたらないため、医療事故とは別に「ヒヤリ・ハット」と呼んでいます。

書式及び参考資料

注意事項

利用者の皆様に提供する回答は、弁護士の法的助言にかえることはできません。あくまで、ご自身の判断の一助にしてください。