飲酒運転を待つ厳しい罰則の数々 2011/03/04

平成23年3月4日

飲酒運転を待つ厳しい罰則の数々

飲酒運転の検問で検査を拒否したら?

警察の飲酒検問では、一般的にはご存知の「風船」と呼ばれるアルコール検知器で呼気の中のアルコールを検査します。呼気1リットル中に0.15 mg以上のアルコールが含まれていると、酒気帯びあるいは酒酔い運転として検挙の対象となってしまいます。道路交通法では、呼気1リットル中アルコール0.15mg以上を酒気帯び運転、「アルコールの影響で正常な運転ができなくなるおそれがある状態」を酒酔い運転と定めており、該当するドライバーは車を降りて警察官の指示に従わなければなりません。

でも、もし検問でアルコール検査を拒否したらどうなるのでしょうか?

道路交通法では、運転者が酒気を帯びて運転するおそれがある場合、警察官は危険防止のための応急措置をとるために、ドライバーの体に含まれるアルコール量を調べるための呼気検査をすることができるとされています。したがって、警察官の求めに応じずに呼気検査を拒否することは道路交通法違反にあたり、違反者は検挙の対象となります。飲酒検査拒否に対する罰則は、道路交通法の改正によって強化されており、3か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられてしまいます。

一方、お酒を飲んでも、呼気1リットル中のアルコールが0.15mg未満で、酒酔いや酒気帯び運転の基準に達していない場合、反則キップは切られないものの、お酒を飲んで運転すること自体が道路交通法違反に当たるため、警察官から注意を受ける可能性があるので喜ぶことはできません。

道交法改正で飲酒運転への行政処分を強化

警察庁の発表では、飲酒運転による死亡事故は飲酒を含まない死亡事故の8.7倍、酒酔い運転に至っては実に31.9倍と、飲酒運転が死亡事故につながる危険がきわめて高いことを示しています。こうした飲酒運転を原因とする悲惨な死亡事故の続発を受け、政府は2012年までに交通事故死者数を5,000人以下に抑えるという大目標を掲げて、度重なる道路交通法の改正を行ってきました。

これまでの道路交通法改正の主なポイントは、飲酒運転や危険運転に対する行政処分の強化です。平成21年6月施行の改正では、酒酔いや酒気帯び運転に対する違反点数の大幅な引き上げや免許取消し期間の延長、刑罰の強化などが行われ、酒酔い運転の違反点数が25点から35点に、酒気帯び運転(呼気中アルコール濃度0.15mg以上0.25m未満)の違反点数が6点から13点に、呼気中アルコール濃度0.25m以上は、13点から25点に、それぞれ大幅に引き上げられました(表)。

ちなみにもっとも厳しい酒酔い運転の基準である「アルコールの影響で正常な運転ができなくなるおそれ」の判断基準としては、アルコールの検知値に関係なく、歩くとふらつく、直立不動ができないなどがあり、現場の警察官による判断がポイントとなります。

平成21年改正道路交通法の罰則

故意による人身事故にはさらなる厳罰が

改正道路交通法では、とくに悪質な違反行為(特定違反行為)に対する罰則も、新設・強化されています。

新設の「運転殺人等または運転傷害等」罪は、自動車等の運転によって故意に人を死傷させたり、建造物を損壊したりするもので、運転殺人等は違反点数62点、運転傷害等は違反点数45〜55点(負傷の程度による)が、建造物損壊の場合は45点が科せられます。また、自動車等の運転によって故意に人身事故や死亡事故を引き起こす「.危険運転致傷」や「危険運転致死」への罰則も強化され、前者には傷害の程度に応じて45〜55点が、後者には62点が科せられることになりました。

急増するひき逃げ(救護義務違反)に対する罰則も厳罰化されます。ひき逃げはとくに悪質な特定違反行為として、従来の違反点25点、免許取消2年から違反点35点、免許取消3年に。さらに、平成19年の改正で、刑罰も5年以下の懲役または50万円以下の罰金から10年以下の懲役または100万円以下の罰金へと強化されました。

また、特定違反行為に対する免許取消し期間も延長され、特定違反行為によって免許を取消された場合の取消し期間の上限が5年から10年に延長されています(特定違反行為以外の違反行為で取り消しになった場合の欠格期間の上限は5年)

自動車運転過失致死傷罪を新設

2001年、当時相次いでいた酒酔い運転などの危険運転による死亡事故に対応するため、それまでの「業務上過失致死傷罪」(5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金)に代り新たに「危険運転致死傷罪」(1年以上、20年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金)が創設されました。しかし、同罪の成立には、「アルコールや薬物で正常な運転が困難」、「制御困難な高速度」、「赤信号をことさら無視」などの厳しい成立要件が必要なため立証が難しく、実際には適用されないケースが相次いでいました。さらに、「危険運転致死傷罪」より「ひき逃げ」の方が刑が軽いため、飲酒ドライバーが事故現場から逃走。体内からアルコールが抜けた後で自首することで、適用を逃れてしまうケースが急増しました。

こうした中、平成18年7月福岡市で飲酒運転の巻き添えで幼児3人が死亡した悲惨な事故をきっかけに、平成19年6月に道路交通法が改正され、「自動車運転過失致死傷罪」(7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金)が新たに設けられました。この結果、自動車運転中に人身事故を起こしたドライバーには、それまでの「業務上過失致死傷罪」に代ってより罪の上限の重い「自動車運転過失致死傷罪」が適用されることになりました。また、対象車もそれまでの「四輪以上の自動車」だけでなく、「二輪または三輪の自動車」や「原動機付自転車」も含まれることになりました。

飲酒運転の周辺者への罰則も新設

平成19年改正の改正道路交通法では、「悪質・危険運転者対策」として、ひき逃げに対する罰則強化にくわえて、ドライバーに酒類を提供した者や、飲酒運転と知りながら車両を提供したり、飲酒運転車両へ同乗した者を「飲酒運転幇助(ほうじょ)行為」として罰する規定も新たに設けられました。この結果、それまで道路交通法で直接罰することができなかった「飲酒運転者の周辺者」の幇助行為を罰することができるようになり、飲酒運転に対する周囲の責任も明確化されました

運転者以外の周囲の責任者の処罰

飲酒運転事故が前年同期比23%減

こうした度重なる道路交通法改正の成果は、喜ばしいことに現実の数字の改善となって如実に現れています。

警察庁発表による飲酒運転などの悪質・危険運転に対する罰則を強化した改正道路交通法の施行後半年間(平成19年9月19日から20年3月18日)の事故発生状況を見ると、飲酒運転による事故発生件数は3,119件と、前年同期比904件(22.5%)の減少を見せています。

さらに、取締り状況を見ても、酒気帯び運転が前年同期比37.2%減の2万7,611件、酒酔い運転が同27.6%減の501件と著しい減少を見せ、改正道路交通法の施行が飲酒運転の減少に大きな役割を果たしていることが現実の数字で証明された形になりました。

飲酒運転・最高速度違反による交通事故の構成率及び死者数の推移(平成12〜21年)

交通事故死者数が57年振りに5千人割れ

警察庁によると、平成21年の全国の交通事故による死者数は4,914人と、9年連続の減少となり、昭和45年のピーク時(16,765人)に比べると3分の1以下と、昭和27年以来57年振りに4千人台を記録し、国を挙げての悲願だった5000人の数字を下回りました。さらに、平成22年の全国の交通事故死者数は前年より51人少ない4,863人で、2001年から10年連続の減少と、わが国の交通事故死者数は著しい改善を見せています。

警察庁ではこうした事故死者数の減少は、死亡事故率が高く悪質性や危険性の高い飲酒運転や最高速度違反による事故が減少していることが、その一因ではないかと考えており、実際に飲酒運転による死亡事故は10年前の平成11年の約4分の1、飲酒運転による交通事故も約4分の1と、目ざましい減少を見せています。

酒酔いドライバーにとっては厳しく思えるかもしれない道路交通法改正による罰則強化ですが、こうした交通事故死者数の減少はもろ手を上げて喜ぶべき朗報であり、今後のさらなる死者数の減少が期待されています。

書式及び参考資料

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