男と女の法律 第2回「不倫」 2012/05/20

平成25年5月20日

男と女の法律 第2回「不倫」

夫の不倫相手に慰謝料請求できるか

前回は男と女にかかわる「離婚」などの法律問題について触れてみましたが、今回は男と女にかかわる不倫や同棲などの法律問題について考えてみましょう。

「不倫」という言葉は誰でも知っています。不倫は婚姻関係にある夫婦の一方がほかの異性と性的関係を持つことで、一夜限りの浮気から夫婦関係を完全に破壊して離婚に至らしめる深刻なものまで、さまざまなケースがあります。

一方、法律面からみると、不倫は「不貞行為」と呼ばれています。法律的に夫婦はほかの異性と性的関係を持ってはならない「貞操義務」を互いに負っており、不貞行為をした夫(妻)はこの貞操義務に違反したことになって、民法の離婚事由のひとつにも挙げられています。

ただし、裁判所はすべての不貞行為で離婚を認めているわけではなく、すべての事情を考慮しても婚姻の継続が不可能な場合にのみ離婚を認めています。すなわち一度きりの不貞行為では婚姻の継続が完全に不可能なほど破綻しているとは言いきれず、離婚が認められるには不貞行為が反復かつ継続的なことが立証されなければならないのです。もちろん不貞行為が一回だけでも、その他の事情を考慮して婚姻の継続が不可能な「重大な事由」がある場合は、離婚が認められる可能性があります。

不倫相手にも貞操義務違反加担の罪が

法律上、不貞行為をした夫(妻)は夫婦の貞操義務に違反したことになるばかりか、その不倫相手も貞操義務違反に「加担」して妻(夫)の権利を侵害したことになってしまいます。このため、妻(夫)は配偶者の不倫相手に対して、夫(妻)の貞操義務違反に加担した不法行為を理由に慰謝料を請求することができます。ちなみに、この慰謝料請求は不倫の結果離婚した場合でもしない場合でもすることができます。

しかし、法律的には不貞行為は「配偶者のあるものが自由意思で配偶者以外の異性と肉体関係を結ぶこと」とされています。したがって、慰謝料請求や離婚を求める裁判では、配偶者が不倫相手と肉体関係があったことを立証できなければ、不貞行為があったとは認めてもらえません。異性と二人で食事をしたり、頻繁にメールをしたり、手をつないだり、軽くキスしたりするくらいでは、法律上の不貞行為とは認められないのです。

ちなみに不倫相手への慰謝料相場は、不倫の結果離婚に至った場合とそうでない場合で、大きく変わってきます。また、離婚事由、婚姻期間、原告の年齢や生活能力、子供の有無、夫婦の協力度合い、不倫期間、精神的苦痛度、相手の支払い能力などが考慮され、100万円から1000万円までさまざまで、それ以上それ以下の場合もあります。

既婚者を独身と信じて不倫

このように夫(妻)と不倫相手の間に肉体関係があることが証明できれば、妻(夫)は配偶者の不倫相手に対して不法行為を理由として慰謝料を請求することができます。しかし、離婚にまで至らなくても長期間別居するなど婚姻関係が事実上破たんしてしまっているような場合は、配偶者の不倫相手は不法行為責任を負わず、不倫による慰謝料を請求することができないとする判例も出ています。

また、夫(妻)が独身だと嘘をついて不倫の相手と付き合っていた場合も、だまされて不倫関係となっていた相手に落ち度はないため、妻(夫)は慰謝料を請求することができません。そればかりか、逆に不倫相手に貞操権の侵害を理由に夫(妻)に対する慰謝料請求をされてしまう可能性もあります。こうしたケースの慰謝料相場は、夫(妻)の支払能力などによって大きく異なり、収入が高い夫(妻)の場合は高めの慰謝料を命じられる可能性があります。

一方、夫(妻)が独身だと嘘をついていても、不倫相手が夫(妻)が本当に独身かどうかを容易に判断できた場合は相手にも過失があるとされ、慰謝料を請求する権利はなくなります。また、夫(妻)に配偶者がいるとわかった後に不倫関係を継続した場合も、慰謝料を請求する権利はありません。

婚姻に準じる「内縁」への保護

「内縁」とは、未婚の男女が婚姻の意思をもって夫婦同然の共同生活(同棲)を行い、社会的に事実上の夫婦と認められているにもかかわらず、役場への婚姻の届出をしていないことで法律上の夫婦と認められていないものをいいます。

たとえば親族から反対されている、夫婦別姓を維持したい、職場の人に結婚していることを知られたくない、夫婦の関係を法律で縛られたくないなどの理由で、最近では内縁関係のままでいる男女も珍しくありません。

一方、法律的には男女が一種に住んでいる(同棲)だけではただの同居人に過ぎないと見なされてしまうため、内縁と判断されるには一定の条件が必要となります。婚姻届を役所に提出していない男女が法律的に内縁と判断されるには、たとえば結婚式を挙げた、生計をともにしている、子供の父兄会や親族などの結婚式や葬式などの集まりに二人で出席している、年賀状や挨拶状を連名で出しているなどといったように、生活実態が夫婦とまったく変わらなければ、社会的に事実上の夫婦と認められているとされ、内縁と判断されます。

しかし、いまだに法律では内縁の法的権利は明確に規定されていません。ただ婚姻届を提出しないまま事実上の婚姻生活を営むカップルが増加してきたこともあって、近年の判例では内縁を「婚姻に準じる関係」(準婚)として扱うことで、さまざまな法的保護を与えるケースが主流となっています。

内縁の不当破棄には慰謝料請求も

法的に結婚に準ずるとされる内縁関係の男女には、夫婦に対する法的義務である貞操義務、同居義務、協力義務、扶助義務、婚姻生活の費用分担義務、日常の家事の連帯責任などの規定が適用されます。さらに、内縁関係にある男女には、労働基準法に基づく遺族補償の受給権、健康保険の被扶養者になる権利、借地借家法上の借家権保護なども認められています。

こうした内縁関係にある男女のどちらかが、相手の同意なしに内縁関係を不当に破棄して、内縁が解消されてしまうことを「内縁の不当破棄」と呼び、不当破棄した相手に対する損害賠償請求や慰謝料請求が認められています。

さらに、内縁関係にある男女は互いに貞操義務を負っているため、相手の不貞行為によって内縁関係が解消されてしまった場合は、相手に対して損害賠償や慰謝料を請求することができます。また、第三者が二人の内縁関係に干渉して内縁を破綻させてしまった場合も、その第三者に対する損害賠償請求や慰謝料請求が認められています。

ちなみに、内縁を解消するにあたって内縁中に2人で築いた共有財産が存在する場合は、財産分与の対象になり、分与の詳細は離婚の場合に準じて判断されます。もし当事者間で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることもできます。

内縁の妻には法定相続権はなし

内縁は事実上の夫婦ではあるものの、法的にはあくまでも「婚姻に準ずる」存在にすぎません。そのため、内縁カップルへの法律上の保護は限られています。たとえば内縁の相手が死亡してしまった場合は、残された内縁の配偶者には相続権は発生しません。したがって、内縁中に2人で築いた財産があったとしても、それがすべて内縁の夫名義だった場合には、原則として内縁の妻には法定な相続権はないのです。

しかし、こうした規定はあまりに理不尽であるとして、「夫の死亡に際して、内縁関係にある妻が夫の事業で共同経営といえる程度に寄与していた場合、その財産がたとえ夫名義であっても、夫の特有財産との合意がない以上は、共有財産になるとして、それぞれの共有者の持分はすべて同じ割合であると推定された」と、事業の共同経営などで財産形成に寄与した内縁の妻に対し、夫の遺産の半分について相続を認める判決も出されています。

また、内縁カップルに子どもがある場合は、認知された子供であれば親の遺産を相続することができますし、夫に一人も身寄りがなく法的相続人がいない場合も、「特別縁故者」として内縁の妻が家庭裁判所に相続財産の分与請求の申立をすることができます。

内縁の男女の子どもは母親籍に

法律上の婚姻をしていない内縁のカップルの間に産まれた子どもを「非嫡出子」と呼び、一般的には母親の親権に属し、母親の戸籍に入ることになります。かたや父親は、子どもを認知することで自分の子どもとして法的に認めてもらうことができ、二人の話し合いで合意できれば、自分の戸籍に入れて親権者を自分に変更して父方の姓を名乗らせることもできます。一方、非嫡出子の子どもを父親が認知しない場合は、母親が裁判所に認知を求めることができます。

また、カップルの内縁関係が解消されてしまった場合、内縁は法的婚姻関係ではないことから、二人の間に産まれた子どもの戸籍に基本的には変化はなく、引き続き母親が単独で子どもの親権者となります。さらに、内縁解消後、母親から父親に対して子どもの養育費の請求をすることもできます。

同棲と内縁の違いとは?

「同棲」は未婚の男女が生活をともにする状態のことですが、法的には一緒に住んでいるだけでは単に同居しているだけだと見なされ、婚姻の意思をもって同居する「内縁」ではないとされてしまいます。そして、内縁のカップルに認められるさまざまな法的保護も受けることはできません。

同棲のカップルが内縁のカップルと認められるには、たとえば何年もの同棲生活を続け、周囲にも事実上の夫婦生活と認められるようになれば、法的な内縁関係として認められ、夫婦に準ずる法律上の権利や義務が適用される可能性があります。

それでは、婚約後も結婚の届けを出さずに数年間同棲していたカップルの男性が、ほかの女性と深い関係になって、突然その女性と結婚したいからと別れ話を切り出してきた場合はどうなるのでしょうか?

こうした場合、同棲していた女性が慰謝料を請求できるのは、二人が内縁関係にある場合の「内縁の不当破棄」によるか、二人が婚約関係にある場合の「婚約破棄」によるかのいずれかのケースになります。

このカップルのように互いに結婚の意思があって将来の結婚を見据えて一緒に住んでいるような同棲のケースは、法的にも内縁と見なされる可能性が高いと思われます。そうなれば、内縁のカップルに適用される貞操義務、同居義務、協力義務、扶助義務、婚姻生活の費用分担義務、日常の家事の連帯責任などの法的保護が適用されることになります。

同棲相手に慰謝料を請求できる可能性も

このケースのように女性の同意なしに一方的に内縁を解消した男性に対しては、「内縁の不当破棄」を理由に女性は損害賠償や慰謝料を請求することができます。さらに、男性の不貞行為によって内縁関係が解消されてしまったとして、貞操義務違反でも損害賠償を請求できますし、浮気相手の女性が二人の内縁関係に干渉して内縁を破綻させてしまったとして女性に対して損害賠償や慰謝料を請求できる可能性もあります。

さらに、このケースでは二人が婚約関係にあったため、婚約を不当に破棄した「婚約破棄」で男性に対する損害賠償や慰謝料を請求することもできます。そして、そのための裁判では、二人の間に婚約の事実があったかどうかが争点になるでしょう。婚約は「結婚しよう」などといった簡単な口約束で成立しますが、裁判で婚約があったと認められるには、そうした口約束はもちろん、それが真剣な約束だったことを証明する証拠が必要となります。

婚約を証明する証拠としては、婚約指輪や結納などの物的証拠があれば十分ですし、婚約を証明する手紙やメール、結婚式場や新婚旅行の予約などといった記録、結婚の挨拶を受けたという両親や親戚の証言、二人の関係を証明する友人たちの証言などがあれば、将来の結婚を前提として二人が同棲していたことを裏付けることができるでしょう。

ちなみにこうした内縁生活の不当破棄に対する損害賠償や慰謝料の相場は、相手の支払い能力やその他事情にもよりますが、100万円から1000万円。婚約破棄は100万円から数100万円で、どちらもそれ以上それ以下の場合があります。

書式及び参考資料

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