またまた新種のハラスメント!今度は「マタハラ」 2014/06/20

平成26年6月20日

またまた新種のハラスメント!今度は「マタハラ」

妊娠や出産で働く女性に嫌がらせが

安倍首相はスピーチの中で、日本経済再生に向けた「3本の矢」の一つである「成長戦略」の中核として「女性」の活躍を挙げ、強い経済を取り戻すためには女性の力の活用が不可欠との認識を表明。「女性が活躍する社会」の実現に向け、すべての女性が生き方に自信と誇りを持ち、女性が輝く国造りを目指すとしています。

ところが、現実にはそうした動きとはまったく逆の事態がいま問題となっているのです。それがセクハラ(セクシャル・ハラスメント)、パワハラ(パワー・ハラスメント)に続く第三のハラスメントと言われる「マタハラ」(マタニティ・ハラスメント)です。

マタハラとは、働く女性が妊娠や出産、それらのための休業などを理由に、解雇や減給などの不利益な取り扱いを雇い主から受けることや、職場で受ける精神的・肉体的嫌がらせなどをさす言葉です。

セクハラやパワハラはいまでは社会や企業における理解がかなり進み、多くの企業が法的対策や社員教育を講じていますが、一方で新種のハラスメントであるマタハラに関しては、対策や教育はもちろんそうした事実への理解さえ不十分なのが現状となっているのです。

働く女性の9割がマタハラを知らなかった

2013年5月に連合が実施した「マタニティー・ハラスメントに関する意識調査」では、「マタハラという言葉や意味を知っていたか」という問いに対して約8割が「どちらも知らなかった」と回答。「聞いたことはあるものの意味はよく知らない」という人も含めると9割以上がマタハラをほとんど知らなかったことが明らかになっています。

一方、「マタハラに該当する被害を受けたことがあるか」という問いには、妊娠経験のある女性労働者の4人に1人が「ある」と答えており、解雇されたり、嫌がらせをされたりなどとの心身への被害を受けたにもかかわらず、被害を受けた女性労働者自身も「マタハラを受けている」という認識が低いことも明らかになっています。

女性労働者が働きながら妊娠や出産、子育てをする権利は、「男女雇用機会均等法」や「育児・介護休業法」をはじめとするさまざまな法律によって守られています。しかし、それにもかかわらずマタハラがはびこる背景には、企業の管理職や同僚はもちろん、被害者である女性労働者までが、女性労働者の妊娠や出産、子育ての権利やそれを守る法律・制度に対する理解や知識が不十分な現状があると指摘されているのです。

妊娠・出産女性への法律違反に注意

あなたが企業の管理職の場合、妊娠・出産・育児中の女性労働者に対して解雇などの不利益な取り扱いをしたり、それらに関する嫌がらせをしたりしりすると、「マタハラ」を理由に女性労働者から訴えられる可能性があります。

女性労働者の妊娠・出産・育児を保護する法律の代表的なものとしては「男女雇用機会均等法」、「労働基準法」、「育児・介護休業法」などがあり、マタハラ行為はこれらの法律に違反している可能性が高いからです。

これらの法律のうち「男女雇用機会均等法」(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、妊娠・出産・育児をする女性労働者を守るためのさまざまな規定を定めています。

妊娠・出産・育児を理由とする不利益扱いを禁止

男女雇用機会均等法では、妊娠・出産・育児やそれらによる優遇処置を理由に、女性労働者に対して不利益な取扱いをすることは禁じられています。

妊娠した女性労働者に対して、上司が「妊婦には営業は無理だよな」などと言って給与の安い事務職に異動させたりすることがよくありますが、これも法律違反にあたります。 男女雇用機会均等法は、妊娠・出産やそれらにかかわる母性健康管理措置や育児時間の請求などの権利を女性労働者が行使したことを理由に、「不利益な配置変更」などの「不利益な取り扱い」をするのを禁じているからです。

男女雇用機会均等法が禁ずる不利益な取扱いには、「解雇、降格、自宅待機、減給、不利な勤務評価、不利益な配置の変更、正社員からパートタイムなどへの労働契約の変更、有期労働契約の更新拒否、就業環境を害する措置」など、さまざまなものがあって、上司などの管理職は注意が必要です。とくに解雇に関しては、妊娠中や産後1年以内は(事業主が正当な理由があることを証明できない限り)解雇は禁じられています。

それなら、あらかじめ「(女性労働者が)『婚姻・妊娠・出産した場合は退職する』と社内規定に定めておけばいいじゃないか」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうが、男女雇用機会均等法ではそうした規定も禁じられているのです。

また、「産前休業(産休)」は一般的には正社員だけでなく契約社員やパートなどでも取得できる権利がありますが、そのことを理由にした有期労働契約の更新拒否も禁じられています。

妊娠・出産女性への嫌味はマタハラに

職場におけるマタハラでとくに多いのが、言葉によるハラスメントです。

妊娠や出産等を理由とした女性労働者に対するさまざまな不利益な取り扱いには「就業環境を害するような措置」も含まれており、妊娠・出産した女性労働者に対して上司や同僚が嫌味を言うのもこの就業環境を害するような措置にあたるのです。

たとえば産休を取ろうと申し出た女性労働者に「前の人は産休をとると会社に迷惑だからと自分から辞めてくれたんだよね」などと言う、産休が明けて職場復帰した女性労働者に「ずいぶん休んだからその分しっかり働かないとな」などと言う、育児のために時間短縮勤務をしている女性労働者に「子どもがいると、早く帰れてうらやましいね」などと言う、体調不良で早退する妊娠中の女性労働者に「おかげで僕は残業だよ」などと言う、などは就業環境を害するような措置に当たります。

また、男女雇用機会均等法は、妊婦が「保健指導」や「妊産婦検診」等を受診するために必要な時間(通院休暇)を確保することを義務付けていて、勤務時間内での受診も許されています。さらに、妊婦は妊産婦健診で医師などから指導を受けた場合は、「時差通勤や勤務時間短縮、フレックスタイムの活用、休憩時間の延長や休憩回数の増加、休憩時間の変更」などといった対応を雇い主に求めることもできます

危険・有害業務に妊娠女性は就くことができない

女性労働者はさまざまな法律によって守られていますが、そうした法律の代表が「労働基準法」です。

労働基準法では、妊娠・ 出産、 産休の取得などを理由とした女性労働者の解雇や契約の打ち切りは違法とされ、産前産後の休業中とその後の30日間の解雇は許されません。

労働基準法はまた、妊娠中の女性労働者を守るため、有害物質を発散するような危険・有害業務への就業も禁じています。

さらに、「販売や営業などの長時間の立ち仕事、階段の頻繁な昇り降りを伴う作業、腹部を圧迫する作業、重量物を扱う作業などの身体に大きな負担を与える業務」などについても、妊娠中の女性はより軽い業務やデスクワークなどへの転換を雇い主に求めることができます。

くわえて、雇い主は妊娠中の女性労働者から求められた場合は、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えた時間外労働、休日出勤、深夜労働などをさせてはなりませんし、妊娠中の女性労働者がこうした優遇措置を受けたことなどを理由に解雇することも禁じられています。

ちいさい企業でも拒否することはできない

そして、いよいよ出産時に関する法律です。

労働基準法では、雇い主は6週間(双子以上の場合は14週間)以内に出産する予定の女性労働者から産前休業(産休)を請求された場合は、就業させてはならないと定められており、出産後8週間を経過しない女性も(一部の例外を除いて)休業を求められた場合は、就業させてはならないとしています。

女性労働者への保護はこれだけではありません。出産後も手厚い保護は続きます。

労働基準法では、生後1年未満の子どもを育てる女性労働者は正規の休憩時間にくわえて1日2回(最低30分間)、子どもを育てるための「育児時間」を請求することができると定められています。

さらに、取得された産休や育休は出勤日として計算され、出勤率に加算されなければならないなど、さまざまな法的保護は企業にとっては大きな負担になりますが、「うちの会社は小さいから産休制度はない」などと企業規模を理由に拒否することはできないのです。

「原職」または「原職相当職」への復帰が原則

男女雇用機会均等法や労働基準法とならぶ女性労働者保護の三本柱の一つが「育児・介護休業法」(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)です。

育児・介護休業法では、女性労働者の産前産後の休業明けの労働条件について「原職」または「原職相当職」への復帰を原則として、雇い主が勝手に給与などの労働条件を女性労働者にとって不利益に変更することを禁じるとともに、職場復帰後の就業が円滑に行われるための必要な措置を義務づけています。

たとえば「子どもができたからもう管理職はもう無理だな」などと言って一般職に配置転換することや「しばらく休んでいたから君の仕事はないよ」などと言って仕事を回さないことなどはこうした不利益な変更にあたるため、決して許されません。

男女にかかわらず「育児休業」の権利が

育児・介護休業法は女性のみならず男性にも育児の権利を認めています。

育児・介護休業法では、一歳未満の子どもを育てる労働者は男女にかかわらず原則1回だけ「育児休業」を雇い主に申し出ることができると定めており、「うちの会社は忙しいので育児休暇の制度はない」などと言って拒否することはできません。

また、育児休業明けの労働条件も「原職」または「原職相当職」への復帰が原則で、雇い主が勝手に労働条件を不利益に変更することは許されません。

さらに育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを育てる労働者が男女を問わず残業の免除を請求できる権利や、「短時間勤務制度」(1日6時間)を利用できる権利も定めています。

育児・介護休業法ではまた、小学校入学前の子どもを育てる労働者は男女を問わず、残業の月24時間、年150時間以内への制限や、深夜(午後10 時−午前5時)労働の制限を雇い主に求めることができる権利を定めています。さらに、年次有給休暇とは別に年5日(子どもが2人以上の場合は年10日)は子どもの看護や予防接種・健康診断などのための休暇を雇い主に求めることができます。

男性社員の理解不足・協力不足が原因のトップ

 

連合の調査によると、マタハラの原因のトップは 「男性社員の妊娠 ・出産への理解不足・協力不足」という結果が出ており、管理職はもちろん全男性社員が働く女性の妊娠・出産・育児を守る法律やマタハラの問題点を理解する必要が指摘されています。このため、企業による社員研修や社内報などによる社員への周知教育が不可欠となります。

   

とくに管理職は部下の女性労働者が快適に仕事できる環境を作る上司としての義務があることを自覚し、妊娠や子育て中の女性労働者にほかの部下が嫌がらせをしているのを見つけたら、率先して守るとともに、女性労働者の欠勤や早退があっても業務が滞らないように適正なスケジュールを練らなければなりません。

また、企業における女性労働者の妊娠・出産・育児への支援制度や社内規定の整備・運用の不備もマタハラの主要な原因の一つとされており、企業のさらなる努力が求められています。

一方、万一マタハラによって解雇されてしまった女性労働者はどうすればよいかですが、まずは「解雇理由証明書」などの関連書類を請求して解雇された理由を確認。不当と思われる場合は、都道府県の労働局などの公的機関に相談。それでも解決できない場合は、弁護士などの専門家に相談するようにしてください。

書式及び参考資料

注意事項

利用者の皆様に提供する回答は、弁護士の法的助言にかえることはできません。あくまで、ご自身の判断の一助にしてください。